- 日本投資者保護基金 (にほん とうししゃ ほご ききん)
祐作:先輩、日本投資者保護基金ってなんですか?
兜:日本投資者保護基金とは、個人投資家が証券会社の破綻などにより損害を被った場合に、損失を補償するための基金のことだな。個人投資家の資産を1000万円まで保護しているよ。
祐作:
あれ? 証券会社って、「証券会社自身の資産」と「個人投資家の資産」は別々に管理しているから、証券会社が倒産しても、個人投資家の資産に影響が及ぶことはないって聞いたことがありますよ。 投資者保護基金なんか必要なんですか?
兜:「証券会社自身の資産」と「個人投資家の資産」を別々に管理することを分別管理という。たしかに分別管理がきちんと行われていれば、第三者機関である投資者保護基金は必要ないんだ。
でも、全ての証券会社が分別管理をきちんと行っているとは限らない。
祐作:どういうことです?
兜:悲しいことに自社の経営が悪化して行き詰まると、顧客の資産やお金に手をつける経営者が、たまに出現するんだよ。ちょっと図で解説するね。
まずは、分別管理がしっかり行われている状態だ↓
証券会社の資産
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個人投資家の資産
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この状態だと、証券会社が経営破たんしても、個人投資家の資産は残る↓
証券会社の資産→破たんで消滅
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個人投資家の資産→全部残る
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次に、分別管理が行われておらず、経営者が顧客の資産を使い込んだ状態の図だ↓
証券会社の資産
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個人投資家の資産
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証券会社が個人投資家の資産を使い込んだ部分
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↓分別管理が行われていない状態で、証券会社の経営が破たんすると、個人投資家の資産が削り取られてしまうんだ。
証券会社の資産→破たんで消滅
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個人投資家の資産→一部残る
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証券会社が個人投資家の資産を使い込んだ部分→破たんで消滅
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祐作:なるほど、分別管理が行われていない状態で、証券会社の経営が破たんすると、
個人投資家の資産に影響が出るわけですね。
兜:
そう、ここで個人投資家に対する救済策がなければ、個人投資家はなにも悪いことはしていないのに、自分の資産が減ってしまうことになる。それでは まずいだろうということで、金融商品取引法の規定により日本投資者保護基金が設立された※。
日本投資者保護基金は、上記のように分別管理に不備があった場合など、個人投資家の預り資産の返却に支障が発生しても、一人あたり1,000万円まで補償をしてくれる。
※日本投資者保護基金は寄託証券補償基金が改組され1998年に設立された。
というわけで、投資者保護基金制度というのは、
銀行でいうと、預金が1000万まで保護されるペイオフ (預金保護)制度に似ている。
ペイオフの証券業界版が投資者保護基金制度といっていいだろう。
なお、日本で営業を行う第一種金融商品取引業を行う者(いわゆる証券会社)は投資者保護基金への加入が義務となっている。
だから、君が使っているネット証券の会社も投資者保護基金に加入している。
祐作:ということは、あれですか。 自分が使っている証券会社の経営がやばそうだったら、証券会社に1000万円までしか預けない方がいいわけですね。
兜:そういうことだ。 まあ、倒産しそうにない、経営状態がよい証券会社を選んだ方がいいけどね。
経営状態がよい証券会社を選ぶコツは、最善の策としては上場企業の証券会社で、決算を見て儲かっている会社を選択することだ。次善の策としては、親会社が業界大手で儲かっている会社の子会社を選ぶといい。
祐作:
なるほど、ちなみに投資者保護基金で保護される範囲を教えてもらえませんか?
兜:投資者保護基金で保護されるものは下記のようになっている。これに関してはマネックス証券のウェブサイトが参考になる。
▼投資者保護基金で補償されるもの(保護基金が合計1,000万円まで補償)
- 証券口座に預けているお金(預かり金)
- 有価証券(株式、投資信託、MRF、ETF、REIT、信用取引の委託保証金代用証券、中国株、米国株)
- 信用取引口座に預けているお金
- 信用取引の委託保証金
- 日経225先物取引や日経225オプション取引の委託証拠金
逆に、信用取引、日経225先物取引などの未決済の建玉に係る評価益は、補償の対象とならないので注意してほしい。
祐作:ところで、投資者保護基金が実際に効力を発揮した事例ってあるんでしょうか?
兜:
過去に2件の事例がある。
まず1件目だが、2000年に群馬県の南証券が経営破綻した際に、その顧客を保護するため総額約35億円の補償が行われた。
2件目だが、2012年に丸大証券という会社が破産したが、顧客保護のために1億7,149万6,717円の補償が行われている。
ちなみに、日本投資者保護基金の資産規模は 2012年現在で約500億円なので、中小規模の証券会社の破たんには対応可能だろう。