差金決済 [読み:さきんけっさい] [英語名:Settlement on balance]
祐作:先輩、「現物株取引で差金決済は禁止されている」と聞いたんですけど、差金決済ってなんですか?
兜:ふむ、差金決済というと、金融商品(例えば株券)を受け渡す代わりに、「反対取引をして生じた損益分のお金だけを受け渡すこと」だな。
具体的にいうと、一日のうちにある株を10万円で買って11万円で売った場合、差額の1万円だけ受け渡すことだ。これは現物株取引では禁止されている。
祐作:そうなんですか。
兜:だから、現物株取引では同じ日に、同一銘柄を売り買いした場合にも、それぞれ別々に決済しなければならない。この場合には、決済日(取引を行った日を入れて4営業日目)に10万円支払って、11万円を受け取ることになる。
祐作:めんどくさいですね。損益の差額のお金だけ受け渡しをした方が早いじゃないですか。
兜:それを認めると、手元に現金が残って一日に何回でも売買ができギャンブル性が強くなりすぎるので、株の現物取引の差金決済は証券取引法で禁止されているんだ。
差金決済が禁止されているので、現物株取引では、一つの銘柄を一日のうちに「買付→売却→買付」したり、「売却→買付→売却」することはできない。
(しかし、現物株取引と違って、信用取引では差金決済が認められているので、同一銘柄をデイトレードで無限に回転売買することができる。詳細はこちら)
祐作:なるほど。では、現物株取引における回転売買の規制について、具体的に教えてもらっていいですか?
兜:例えば、100万円の資金で100万円の株を買い、その日のうちに売ったとする。そこまでの売買は認められている。しかし、もう一度、その銘柄を買うことは禁止されている。
もし、そうした取引を、差金決済を用いずに行うならば、受け渡し日に100万円の株を2回買い付けた代金の「合計200万円」を用意する必要があるんだ。他にも具体例を挙げておくから見ておいてよ↓
例)
▼現物株のデイトレードにおける差金決済の例 (取引手数料は無視しています)
●ケース1 買い付け余力:100万円の場合
・A銘柄を100万円で買い→A銘柄を102万円で売り
・A銘柄を102万円で買い
↑これは駄目。2度目は買うことができない。
●ケース2 (時価102万円のB銘柄を持っていた場合)
・B銘柄を102万円で売り→B銘柄を100万円で買い
・B銘柄を100万円で売り
↑これも駄目。2度目は売ることができない。これは状況によっては非常につらい。売りたい株を売れないので。
▲差金決済の例、ここまで
●ケース3 買い付け余力:100万円の場合
・C銘柄を100万円で買い→C銘柄を102万円で売り
・D銘柄を102万円で買い→D銘柄を104万円で売り
↑証券会社によってOKなところもある※
ただし、いずれの場合も、買い付け余力が取引に必要な分残っていれば、差金決済取引には当たらない。
たとえば、A銘柄の例で、300万円買い付け余力があれば、2度目の売買は、最初の売買にあてた資金とは別の資金で売買できるので、差金決済にはひっかからない。
要は、「デイトレで一度往復に使ったお金は、その日同じ銘柄を取引することには使えない」ということだ。
現物株取引において、日計り取引(デイトレ)をする場合は、一番注意しないといけないことなんだよ。下手をすると、売りたい株を売ることができない状況に陥るからね。
※「ケース3」は一日のうちに同一資金で異なる銘柄を売買するループ取引という手法。この手法をループトレードやサーフィントレードと呼んでいる証券会社もある。
ループ取引は証券会社によって対応しているところもあるし、対応していないところもある。自分が使っている証券会社によく確認した方がよい。
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