先日、当サイトで「松井証券、顧客の売買データを一橋大と共同研究」という記事を配信しました。
松井証券が保有する投資家の株式売買データなどを匿名の形で大学に提供し、投資家が株式売買の際に必ずしも合理的な判断をしない原因などを研究する予定でした。
しかし、6月6日、松井証券はこのの共同研究を無期延期すると発表しました。個人情報の提供を嫌う顧客から反発を受けたためです。以下、松井証券のプレスリリースからの抜粋です。
行動ファイナンスに関わる共同研究の無期延期について
松井証券は、行動ファイナンス(*1)に関わる一橋大学大学院の研究グループとの共同研究を無期延期することといたしましたので、お知らせいたします。
当社は、わが国における行動ファイナンス研究の発展に寄与し、ひいては投資家の利益や市場の発展に資することを目的として、平成19年5月30日、同研究グループとの共同研究を行う旨を公表いたしました。
当社は、公表と期を同じくして、共同研究の実施に向け、当社のお客様の売買に関する情報を同研究グループへ提供することについて、「個人情報の保護に関する法律」に基づき(*2)、お客様に事前通知を行いました。
この度の情報提供は、当社社員以外には個人を特定できない形式であり、かつ同研究グループ員は当社オフィス内でのみ情報を閲覧、集計できるとしたものであります。個人情報の取り扱いに関して一部誤解に基づく報道もなされておりますが、本件における事前通知という手続は、こうした情報を提供する上で一般的に用いられている手法であります。しかしながら、行動ファイナンスという学問領域に関する理解そのものが広く一般に醸成されているとは言えない現状にあったことは事実であり、加えて行動ファイナンスに対する当社の説明が必ずしも十分でなかったこともあり、一部のお客様にご懸念を与えたこともまた事実であります。
こうした状況を鑑み、当社は、この度の行動ファイナンスに関わる共同研究を無期延期することといたしました。事前通知の方法や研究に関する説明についてお客様からいただいたご意見は真摯に受け止め、今後の参考とさせていただきます。
以上
*1
投資家は合理的に行動するとは限らないという前提に立って金融市場の現象を分析する研究分野。*2
個人情報を第三者に提供するための手続きには、予め本人の同意を得る方法の他、本人の求めにより提供を停止することを前提とした上で本人に予め通知、または「本人が容易に知り得る状態に置く」方法があり、今回は後者を採っております。
朝日新聞の記事によると、売買情報の提供に同意しない顧客からの問い合わせが3000件以上も寄せられたとのことです。そのため研究は無期限延期となりました。
無期限延期であり完全な停止ではありませんが、顧客に歩み寄った格好ですね。ただ、いったん「株式売買データなどを匿名の形で大学に提供する」と発表したことにより、松井証券のイメージは悪化したと思われます。
これが口座開設数に影響を与えるか注目したいと思います。6月の口座開設数については、7月の上旬には発表されるでしょう。松井証券の口座数速報値についての開示のタイミングは、いつも早いので。